Media circus

実に愉快な1日だった。
のんびりとしたイラクの田舎町サマワでちょっとしたメディア狂想曲が繰り広げられている。自衛隊がどう動くか、メデイアは基地の外でさわさわしながら待ち、自衛隊が動けばみんな走り出して車に乗り込み、その後に付いて大移動が始まる-”Media circus.”自衛隊の取材に来ている報道陣は国内外合わせてざっと30人。先遣隊1人に1人の割合だ。イラク人のドライバーや通訳を含めるとその数は 100人を超えると思う。それらが自衛隊の動きとともに大移動する。自衛隊は安全に関わるという理由から、いつどこで何をするということは一切伝えない。情報がないからメディア側はついて行くしかない。自粛というのはいったい誰に決定権と責任があるのだろうか?ものすごくあいまいだ。しかも権力を持つ側が声高に叫ぶのは民主主義国家のすることではない。出したくないなら「今回は〇〇の理由から一切広報はいたしません」と言えばいいのではないだろうか。自衛隊側はとにかく「安全第一」何でもかんでも「安全」に関わる問題として伏してしまうのはあまりに雑だし、幼稚だし、甘い。ロイターやAPにそんなことを言っても理解されるわけがない。『雅子さまご懐妊』というニュースがいい例だ。国内メデイアにしても外通が自衛官の様子を流すのに指をくわえて眺めているわけには行かない。誰もがここに仕事をしに来ている。ルールは守ろうとしているし、自衛隊のイラクでの活動を失敗させてやろうと考えている人よりは成功して欲しいと考えている人の方が多いと思う。正直、何を伝えて/撮って良くて、何がオフレコなのか、みんな計りかねている様子は気の毒だ。

「これは撮ってもいいとか、ここはダメとか具体的に示して欲しい」
「すべてのメデイアをひと括りにしてダメと言われてもわからない。ダメなものがあれば何月何日の〇〇新聞/局のどれそれと指摘して欲しい」
「何を食べたかということも“安全”にかかわることですか?」
「メディア側全員が彼らの会見に一切集まらないとか、われわれが自衛隊のすることを無視すれば、彼らも焦ってきちんと考え始めるのではないか」という、いかにもジャーナリスティックな意見もでた。フランスとか英国など、「広報」「国民への説明責任」「公僕」という概念のある社会的先進国ならありえるかもしれない。日本ではそうした概念が薄い、というかほとんど口先だけで中味はない。「効果のほどはあるか疑問」というのが、ある日本の記者の考えだ。
イラク戦争報道の大混乱の一端がここにもある。

10: 15 テレビ東京にLIVEを入れる。現場にて1人でライブスポットに行き収録したのは初めてだったのでいい勉強になったし、生感覚が面白かった。「原稿見ない方がいいですよ」という一言を貰った時は「大丈夫かな」と思ったが、逆に腹をくくってやれた。ラジオ生番組の気軽さが自分は好きだったけれど、それに近い感覚があった。出川さんなどは短くポイントをまとめてわかりやすく伝えるのがとてもうまい。これからもっと勉強していきたい分野だ。

中継の後、NHKと昨日の部族長会議の映像配信の話がまとまる。「貴重な映像」と理解してもらえたことは率直にうれしい。「当然」という思いもあるが、自分の場合、過信するのはそれこそ「自粛」した方がいい。

コンクリート工場を見に行く途中、サマワ郊外の農村を撮影。素朴さがとても美しい少女達に出会う。彼女たちは学校に通っているのだろうか。どんな学校に通っているのか、と気になってコンクリート工場の取材をキャンセル。村の学校へ。

小さな村の小さな学校。教室の床は直に地面、激しく剥がれ落ちた壁の塗装、割れた窓ガラス。相当使い込まれた黒板、黒板のない教室もある。サダム時代に入れたという机とイスは比較的まともだ。始業終業を知らせるベル、電気(スイッチなども)、トイレは新しくされていた。昨年12月、オランダ軍から修繕費として500ドルを寄付されて校長先生が発注したと言う。目新しいトイレだが、水が来ていないため使われていない。水道管は来ていて、屋根の上にタンクもあるが、ポンプがないから吸い上げられない。これぞ「絵に描いた餅」だ。

村に水を送っているサマワ市内の給水施設を見に行く。巨大なタンクだが、中は空っぽ。大元の飲料水(地元ではフレッシュウオーターと言う)用施設のキャパシティが小さく、水が送られて来ないためと言う。村への給水は夜間 2、3時間しか行なわれない。施設内にはもうひとつ生活用水の小さなポンプとタンクがあって、こちらはユーフラテス河から引いてきている。水道施設の復興はほとんどゼロから取り組まなくてはならず、大規模なプロジェクトを組まないと実現しない。これは簡単なことではない。

オランダ軍に対して、結構やれることはやっている印象を受ける。それでも「何もしていない」と言われる。日本は給水事業をやると言っているが、市民の期待に沿う規模にはならないだろう。そうなった時、サマワの人たちから「何もしていない」”useless”という評価を受けてしまったら・・・双方に気の毒ではないか。

町一番の喫茶店でロケ。実はみんな、日本について、車と電化製品以外ほとんど知らない。日本が中東にあると思っている人がいたのはおかしかった。総じて友好的だが、中には他の国と同じで石油目当てだと声を荒げる人もいた。バグダッドやティクリートなどでは、こっちの意見の方が普通だ。サマワに来てから、誰もが一様にウエルカムだったので逆に新鮮だった。議論が熱くなって収拾がつかなくなったので撤収。

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