どたばたといろいろアクシデントが重なって結局バグダッドを出たのは12:00過ぎ。15:00からの部族長会議は完全にミスったかと思ったら、サマワに16:00前に到着。ロケは奇跡的に間に合った。まったくこの人たちは帳尻合わせの天才だ。
日本のメデイアを始め、たくさん来ていると聞いていたが、ふたを開いてみたら海外メディアは自分だけ。これって価値があるのかないのか判断つかないなあ、などとちょっと心配になったが、まあexclusiveだし、いいことだ。記録としては面白い。他はどうしていたかというと、自衛隊とオランダ軍、そして州知事との会見の方に皆ついていったそうだ。部族長会議は無視された形になってしまった。まだ、日本側から会見等に関する接触はないと言う。
ファディ(セキュリティー・オフィサー兼マネージャー)、アブドゥラ(運転手)、ディーナ(通訳)、マハシン(ディーナの兄、運転手転じてアシスタント)、そしてサマワに着いてからガイド役のウィリアムを拾って、取材チームは総勢6人の大所帯。ワンマン取材のはずなのになあ、なんでこんなに大勢なんだ?ロケが間にあったことが彼らをホッとさせていた。皆、気が合っているようで夕食もワイワイ、会話も弾んでちょっとしたツアー気分。雰囲気が良いのは実に好ましい。
先週、飯田さんと来た時は停電が1回しかなかったのに、今日は4回。サマワ市街は電気、水ともにアル・シャウベなどに比べて良い方かと印象を受けたが、やはり不安定と見るべきなのかもしれない。自衛隊が来たその日に何度も停電になるなんてまるでジョークだ。
夕食後、町で一番大きい喫茶店を見学。水パイプをふかしながら、男たちが衛星テレビを見ながら、おしゃべりする社交場だ。壁には、なぜかブルース・リーの映画のホコリで色あせたポスターが何枚も貼ってある。皆笑顔で迎えてくれるし、ものすごく友好的だ。
夜9: 00すぎ、店も数軒の飲食店しか開いていない時間帯になっても通りを安心して歩けるなんてイラクでは特殊な状況だ。ファディとアブドゥラは通りをスキップして渡ったり、少しも緊張したところがない。いい町だ。状況は変わるかもしれないから油断はできないけれど、自衛隊には一日も早くこの町の人たちとフランクな関係を築いて欲しい。そう、”フランクな関係”だ。
ただ、無防備すぎる町と市民の雰囲気に、いちまつの不安を感じないわけではない。
ホテルはどこも満杯で、一番最後にサマワ入りしたであろう自分たちは見つかっただけでもラッキーだったかもしれない。日本のようにお金を払うことなしに予約などはきかない。アパートメント型のホテルはかなりボロ。お湯は出ないし、トイレの匂いも結構気になる。それでも陥落直後のカブール、『スピンザールホテル』の幽霊が出そうな部屋よりはましか。2部屋2晩で70ドル。ちょっと高いかな。
明日、『ニュース・アイ』に電話レポートを入れることになった。リラックスした環境を作ってくれるいい枠だ。自衛隊の方は配信映像があるようなので、一方のサマワの人たちや町の様子やメディアのフィーバーぶりを伝えてほしいと言う。部族長会議や友好的な雰囲気を素直に伝えればいいと思う。原稿用意しなきゃ。
そういえば、部族長の1人が特に若者に職を与えて欲しいと言っていた。ウィリアムはオランダ軍基地で仕事を得て、明日から働くそうだ。ガイド役は終わり。大のシェークスピア好きの父がウィリアムと名付けたと言う。とても素直な性格の持ち主だったから少しさびしい気もするが、きちんとした職を得られたのは彼にとって好ましい。心からがんばって欲しいと思う。