バック・トゥ・スクール

Day-2
ラマダン中、一家の朝は遅い(正確には早すぎる、か)。
11:00 ジョマナの学校「アル-ハリル小学校」を訪ねてみた。お土産用にせっかくチョコレートも大量に買い込んだし、と思いつつ。

まるで新築の学校だった。子どもたちの姿が消え、すべてがほこりをかぶり、割れたガラスの破片が散らばって荒み切った学校は、まるで別の世界の話だったと思うほど学校らしい学校の姿を取りもどしていた。ショウカッド校長は上気した笑顔で再会をことのほか喜んでくれたようだった。外内装は真っ白に塗りかえられ、電気もファンも新しくなり、机や椅子もぼろいものは見当たらず、廊下の電気もガラス製の装飾カバーがつけられて、全てが美しくなっていた。教室のドアにいたっては、足元の部分に金色の金属板が張ってある徹底ぶり。床を水掃除した時に下の部分が濡れて木が腐って壊れていくことのないようにするためだ。素晴しい。ショウカッド校長によると、9月にアメリカがやってきて(USAIDだと思われるが)9月に修繕が始められたと言う。その後、10月4日に再開されて新学期をむかえた。

勉強するのにふさわしい環境を取りもどして、今ではほとんどの子どもたちが登校してきていると言う。治安の問題があるので、多くの親が送り迎えをしているそうだ。先生たち、特にショウカッド校長はジョマナが学校に来るようにファイドに話していたようだった。とはいえ、爆破された警察署から数ブロックしか離れていないところに学校はある。子どもたちが巻き添えになる可能性は大いにあるのだから心配だ。

TIKRIT に行って何を撮るかまだ定まっていない。先にジョマナの「バック・トゥ・スクール」を撮りたいなあ、とも思う一方で、日本の番組で放送したらきっと「アメリカもイラクの復興を進めているじゃないか」と短絡的に解釈されて、ますますイラク戦争はもう終わったという感を強めてしまうのではないだろうか、と心配してしまって迷いが生じている。でも、誰もいない教室でジョマナが見せたあの笑顔が本物になったということを、やはり撮らないでおくわけには行かないと思う。TIKRIT行きは数日延期して、バグダッドでの取材を進めていこうか……。

米軍の駐屯地を回る。各PAOと会い、米軍取材の段取りを考える。プレスセンターがあるコンベンションセンターでは、アーミテージ国務次官の会見が会ったために、セキュリティチェックは厳しいものだった。世界一厳しいセキュリティチェック-さすがアメリカだ。会見は聞かずに帰った。

それにしてもプレスの数が少ない気がする。TVカメラの数は 20台弱だからほどほどかもしれないが、報道陣の数が少ない。出席者の3分の1は地元メディアだろう。とても世界中が注目しているニュースの現場とは思えない迫力の無さだ。世界の興味はイラクの国や民衆そのものにはもう興味が薄れてしまっているのだろうか?プレスセンターがあって、その情報に報道陣が集い、会見を撮る-座って質問するだけでジャーナリスト面ができる、創造性をまったく必要としない現場のいい例だ。

夕食は、チキンのトマト煮、ブロッコリーのトマト煮、ナスのフライ、オリーブや野菜のピクルス、ズッキーニに炒めたご飯を詰めて煮たロールキャベツのようなお料理、ナン、白米。男性も女性も子どもも一家全員で食べたのはこれが初めてだと思う。とにかくおいしい。食べすぎで気持ちが悪いほど。
夜、DVDを見るためにゲームセンターにPS2を借りにいった。そこは15分350ID、10畳ほどの店内は中高生ぐらいの少年たちが順番待ちをするほどこみ合っていた。

22:15 大きな爆発音があった。なにがあったのか確認の仕様がない。

22: 30 ファディが戻り、米軍の車両を狙い路上に仕掛けられた爆弾が爆発したと言う。現場はすぐ近くということで行くことにした。車で5分ほど。野次馬が大勢、少年たちがまとわりつく。”Fuck you”など、汚い言葉をふざけて使って米軍を茶化す。死傷者なし。リモートコントロール式の爆弾ということから通りに面した周辺を捜索するが犯人は見つからなかった。警察署といい、今回といい、この辺もけして安全ではなさそうだ。

24:00 帰宅

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