首都ジュバにあるユニセフ・南スーダン事務所に着くなり、目に飛び込んできたのは、”TOTTO CHAN”という看板でした。スーダン内戦中にユニセフ親善大使の黒柳徹子さんがこの地を訪れた際、兵士にさせられた子どもたちや戦闘で親を失った子どもたちのために「できることをしたい」と申し出て建設された施設です。子どもの保護、トラウマ・ケア、家族探しなどを行っています。戦闘が激しかった頃は、およそ200人もの子どもたちがこの施設に一時保護をされていたそうです。現在は、国の社会発展省が仕事を引き継ぎ、管理しています。
スーダンの内戦が終わり、2007年~2008年にかけて南スーダン軍の子ども兵士たちの除隊が進みました。今では、『トットちゃん・センター』で暮らす子どもたちはいません。
しかし、戦争が終わっても、国境沿いで活動するウガンダやコンゴの小さな武装グループがスーダン側の村々で子どもたちを誘拐する事件が毎日のように起きています。そうした子どもたちのために、まだまだ『トットちゃん・センター』の役割は重要です。建物はとてもしっかりしたコンクリートの二階建てです。かつてのように子どもたちのケアが忙しく行われているわけではなく、お役所のような雰囲気でした。社会発展省の人たちが椅子に座り、少し時間を持てあましているように見えました。こうした状況の中で必要とされているのは、地方の子どもケア・センターの拡充と充実です。
かつて私がシエラレオネで取材したような子ども兵士が社会復帰するために暮らす孤児院のような施設は、スーダンにはありません。ユニセフは近年、孤児院に子どもたちを留めるのではなく、少しでも早く親や親戚などのもとに還す方針をとっています。ただ帰すのではなく、地域の受け入れ態勢や教育の遅れを取り戻すための仕組みを整えた上でのことです。子どもたちは孤児院のような施設で暮らしていても、いずれはそこを出て「卒業」していきます。グループ・ホーム形式などで成功している例もありますが、子どもたちだけでは社会に復帰する際に障害にあってつまづいてしまうことが多いのです。家族や親戚はもちろん、地域で受け入れて行かないと貧困からは抜け出せず、道を見失って再び兵士に戻ってしまうケースもあります。ですから、戦いを経験した子どもたちにとって家庭・家族という雰囲気の中できちんと見守られて暮らすことがとても重要なのです。
南スーダンは新しい国になります。今、仕事はたくさんあります。兵士として大人たちと戦場で戦っていた子どもたちに大切なのは、専門的な技術を身につけられるように”advocacy program”をスタートさせることです。エンジニアとか、電気技師とか、大工や服飾職人などなど、社会で暮らしていく術を学ぶ機会です。私は、『トットちゃん・センター』がその役割を果たせるのではないかと思っています。子どもたちとって、”TOTTO CHAN” センターは、忘れられない親しみ深い場所であることを考えた時、彼らが自分の力で意欲をもって未来を切り開いて行くのに最もふさわしい場所ではないか、と思うのです。
コメント
- Fumi Yoshikoshi より:2011年2月12日
子ども兵士の問題には色々と考えさせられました。子ども兵士に反対するのは簡単だけれど、実際に子どもが戦場に行かなくてすむような環境をつくるのはとても難しいし、また戦場から帰ってきた子どもたちの心のケア、その後の人生のサポートなど課題も多く、一筋縄ではいかないのだということを改めて感じます。
スーダンの子どもたちに、一刻も早く平和が訪れることを切に願います。。。