Day-18
風ひとつない穏やかな日。静かな湖面に小石を投げ込むとポチャンと音がして水紋が広がっていく。水紋はやがて消え、また静かな湖面にもどる。大きな石を投げ込むとドボンという音がして大きな水紋がさっきよりも遠くへ広がっていく。それもやがて消える。どんなに大きな水紋も時間が経てば消えるということは誰もが知っている。でも、水紋が消えないうちにまた石を投げ込むと、バシャンという濁った音がして真円を描いていた水紋はぶつかり合い、乱れ、規則性を失う。さらに、次々と石を投げ込むと湖面は激しく波打って静けさは見る影もなくなる。静かな湖面を眺めていた人たちは、最初は一筋の水紋の広がりを眺めていたが、そのうち1人2人と去っていく。
朝、身支度をしていたら、そんなイメージが頭に浮かんだ。
今日アンマンへ撤収予定だったが、ドライバーのアブドゥラの都合で明日の午後になった。13:00に出ると同日の夜遅くに着く。もしかしたら、時間によったらそのまま空港かな。帰りはいつもこんなふうだ。
今回は、途中でテープの補給を受けた。東京からアンマンの栄花さんへDHL、栄花さんからアブドゥラが受け取ってアンマンからバグダッドまで運んでくれた。週に平均3~4往復するこのGMC陸送便はどんな方法よりも安全で確実だ。一部始終はファディが管理してくれる。こうした確実なロジシステムがフレキシブルに活用できるのは後方支援を必要とするロケには大きい。
ファディの会社はダマスカス-アンマン-バグダッド-西岸-ベイルートを網羅する陸送網だ。みんなファミリーだし、どこで何が起こっているかもモバイルで常に把握している。協力してもらえば、いろいろなことに活かせると思う。
なんと今日ラマダンが明けた。イードだ。シーア派はスンニ派よりも一日遅れ、明日ラマダン明け。さすがにラマダン明け当日に強盗は出ないだろうと考えていたし、もう少し居てもいいように思うけれど、今が撤収時だと思う。
午前中、家族は起きてくると、それぞれキスをしてラマダン明けイードをお祝いする。この場に居合わせることができて良かった。こんな普通の幸せを与えてもらったことに心から感謝したい。
昼頃、爆発音。後のニュースでバグダッド、バクバ、キルクークの3箇所でTNT爆弾テロがあったことを知る。映像は、現場検証する米軍の様子を遠目から撮ったもの。バグダッドはアル-シャウベの近く。