『光なき孤児~東欧の小国の悲劇』

ソ連崩壊から20年が経ちました。
ソ連の経済圏に組み込まれていた産業が崩壊し、ヨーロッパの最貧国に転落した東欧の小国があります。モルドバの孤児問題をとおして 現在を考えたいと思います。

『光なき孤児~東欧の小国の悲劇』 
NHK BS1 ドキュメンタリ-WAVE ~シリ-ズ・ソ連崩壊から20年~
(初回放送2011年12月28日)

番組の内容をご紹介します。

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ヨーロッパの東モルドバ共和国の農村には、子どもの姿ばかりが目立ちます。多くの大人が外国へ出稼ぎに行ってしまい、子どもたちは親と離れて暮らしています。
「ママはイタリアで働いています。」「どこにも行かないでほしい。」(子どもたち)
親から連絡が途絶え、孤児になる子どもたちは増える一方です。
かつてはソビエト連邦に属する共和国の一つだったモルドバ。 しかし、社会主義に成りきった国に競争力のある産業は一向に育ちません。 今 一人当たりの平均月収は約100ユーロ、ヨーロッパで最も貧しい国となってしまったモルドバに自立の道は見えません。 

首都キシニョフで 一日中行列が途切れない場所があります。隣国ルーマニアの領事館です。
「ヨーロッパに行けばお金を稼ぐことが出来ます。月に200ユーロしかもらえないベビーシッターの仕事がイタリアやスペインでは4倍ももらえます。この国にいては家族を養うことなんて出来ませんよ。」(女性)
4年前にEUに加盟したルーマニアに行けば、たくさんの働き口があります。市民権が手に入れば、ヨーロッパ各国を自由に移動し、さらに良い条件で働くことも可能になります。市民権の申請者は年間50万人以上います。しかし、得られるのは1万人にすぎません。 一日も早く外国に働きに出たいために 不法に出国する人たちも後を絶ちません。 

モルドバ国家警察の警官たちの夜の任務は、子どもたちの保護です。保護される子どもたちは、キシニョフ市内で毎月100人を超えます。団地のボイラー室や地下室、使われなくなった排水溝・・・徹底的に探します。
「犯罪に関わっていなければいいが-」「外は寒いし凍死しかねないからね。死んでいるとき?ときどきあります。」(警官)
10月末から気温が急激に下がり、路上で暮らす子どもたちには 命の危険もあります。
深夜営業のカフェで保護したのは、14歳の少年3人です。昼間は通りで物乞いをしていました。2人は家出、1人は遠い村からやってきた孤児でした。身元調査をして親に連絡がつけば返します。身寄りの無い少年は 市内の孤児院に預けられることになりました。 
「親は・・・いません」(少年)

キシニョフ市内には 8ヶ所の孤児院があります。その一つ「ガバローチェの家」は、国営の施設ですが運営は外国からのNGOの支援で成り立っています。路上生活をしていた子ども、捨てられていた幼児、薬物中毒の親から保護された兄弟・・・いつも定員オーバーの状態です。出生証明書もなく、誰が母親なのかすら分からない子どももいます。 親から離れたショックで言語障害や情緒不安定に陥る子も少なくありません。
孤児院の入所期限は最大2年です。子どもを親元に戻そうとケースワーカーが日々動いています。 しかし、家庭訪問の結果、親元に戻せるのは2割を切ります。
「子どもを育てる環境ではありません。別の家庭で育ててもらうほうが良いですね。」(ケースワーカー)

~つづく~

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