テロのこと知ってるのか?

Day-15
今日はほとんど撮影なし。
前回病院で出会ったハナンの実家をハイダを連れ添ってファディと3人で再訪した。クラスター爆弾の不発弾で左足を失った少女の姿にはたくさんの人たちの心をうった。撮影はしなくても、彼女が今どうしているのかを知る必要があると思っていた。

ハナンの実家はバグダッドから1時間、ユースフィーアという小さな町だ。見覚えのある田園風景。戦争中、バグダッドに進軍する米軍に破壊された大きなイラク軍基地もそのままだ。地元の警察官が検問をしていた。

ハナンの実家に着いた。ハナンがいた。当時、エレベーターが使えずに4階のハナンの病室まで階段をのぼって行かなくてはならなかったが、見舞いにきた祖母は息切れをおこした。その祖母といっしょに家の前に座っていた。半年でもこんなに成長するものかと思ってびっくり。

すっきりとした穏やかな表情をしている。あの時は顔がむくんでいたのか、などと思い出す。取材後、半月後に左足と裂けたお腹の手術をしたそうだ。左足には軽く包帯が巻かれているが、痛みはないと言う。痛みはないが、食べたものをもどす時があるようだ。ハナンのおじで養父のサードは留守だった。今はバグダッドでタクシードライバーをやっているそうだ。サードのお兄さんが寝起きの顔で出てきて、強く握手して、あいさつのキスを交わす。

ハナンは木の棒を杖にしてピョンピョンと小走りする。松葉杖は持っているが、使わなくなったらしい。リムは?と聞くと以前は病院に聞くなどして手に入れることもできたが、今は扱ってもらえる場所がないと言う。

ジョマナの学校と同じように、この辺の学校も修復されて再開したが治安が悪いためにもと通りに子どもたちが戻るまでには至っていない。ハナンはまだ学校へは行っていない。おじは、行けるようになったら行かせたいと言っていた。学校に行こうと思えば、リムは必要になるだろう。もう少しして傷口が落ちつけばリムが付けられるようになる。作るのにいくらぐらいかかるのだろうか?

おじたちとの話しは面白かった。前回は駆け足の取材だったし、イラクという国、民族の知識も乏しかったからあまり話しができなかった。まず、この辺のクラスター爆弾の処理は8月ぐらいに行なわれたそうだ。彼らはCPAと言っていたが不発弾処理は米軍そのものではなくCPAの管轄なのだろうか?その後は事故もないと言う。これは良かった。でも、他の地域と同様CPAや米軍、警察を狙ったテロ攻撃は絶えないらしく、強盗も多い。羊に爆弾をつけたケースもあったと言う。

彼らは初め、アメリカというものに対して知識もないいわば初対面だったが、この6ヶ月間でアメリカに対するイメージはどんどん悪い方向に固定化されている。前回の取材でハナンのおじたちは「どちらとも言えない」派だったが「口先だけのアメリカより、実行を伴ったフセインの方が良かった」に変わっていたのは象徴的だ。

彼らはファルージャ出身のアシューラ(部族)だった。ファルージャは外の人間が入ってきて支配することに激しく抵抗する部族性と土地柄だそうだ。その志向はイラクの他のアシューラよりもずっと強いと言う。アメリカ軍のファルージャにおける最初の蛮行が住民の激しい反感をかった。

現在、アメリカ軍はファルージャ中心部には米軍基地をおかず、周辺に留まっている。中に入れば攻撃されるからだ。おじが「ムジャヒディーン」という言葉を使った。ファルージャで米軍に攻撃をしかけているのは、「サダム・ロイヤリスト」だからというよりはむしろ「聖戦」という性格が強い。この辺はTIKRITとは少しことなっているように思う。こうした細かいズレを認識できただけでも有意義だ。彼らに「ファルージャに行こうと思っていたんだけど・・・」と言うと「薦めない」と言われてしまった。今回ファルージャはNGとなったが、この結果は良かったのかもしれない。次回ファルージャに行くとしたら、彼らに指南してもらえばいい。

あいさつをして様子を見たら帰る予定だったが、お昼までごちそうになってしまった。前回もそうだったが、ハナンの家の自家製パンは粗挽きの麦粉を使っていて香ばしくて実においしい。

別れが惜しい。帰り道、ハナンとワリッドの2人ぐらい、自分が何とかしてあげられないかと思ったりする。でも、彼らの人生に踏込みすぎだろうか……などと考えたりいろいろ。

今朝、パレスチナホテル、シェラトンと石油省がテロにあった。石油省が攻撃されたのは初めて。ロバの馬車からRPGが発射されたそうだ。犯人は捕まったのだろうか。こちらはのんきなものだ。

2 日ほど前、中心街を通りがかった時、上空を飛んでいたアパッチが上空を低空でゆっくり旋回しながら明らかに肉眼で何かを探している様子だったので、このあたりで何かあるんじゃないか、と漠然と感じていた。常時戦闘態勢なのだからテロに対する正規のパトロールなのかもしれない。一方でこう思った。攻撃予告なのか、タレコミかわからないがテロの事前情報を彼らは何らかの形で受け取っているのではないだろうか?もちろん推測の域を出ないが、自分がこうした疑いを持つのだから毎日ここで生活して見ていればアメリカ陰謀説を真剣に信じる人たちが出てきても不思議ではない。

ハイダは西欧型の志向を持っている人間だが、毎日CPA関連の機関がある”Green Zone”で働くうちにイラク評議会やCPAのスタッフたちが何もしていないと感じるようになっている。CPAはもっとできるはず、と感じている。彼が言うには、米軍でさえCPAを能無し扱いしているという。実際にはいろいろやっているのかもしれないし、「やっている」と言うだろう。でも、ハイダのように人の意見や考えを思慮深く聞いて、勉強熱心な人間から失望されているのが実情だ。

書き忘れていた。3日ほど前、ジョマナがユニセフマークの入ったビニール袋を持ち帰ってきた。学校にユニセフが来て配ったのだ。それは良かった。中味はクレヨン、ノート2冊、鉛筆、鉛筆削り、消しゴム、定規、子ども用ハサミ。でも、これらはその辺でも買える。今、先生、親、子どもたちが望んでいるのは一にも二にも新しい教科書だ。内容もいつもと比べると貧しい。ユニセフも本隊がいない中で精一杯だったのではないか。よくやったと思うし、本当に小さいことだけれど信頼を得ていくために今できることを示し続けるというのはきっと後に繋がる。

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